いや、一瞬ではないだろ。

その後の人生も一応関わってくるだろ受験はさすがに。


なんていうか本当にスポーツやってる奴って脳筋なところがあるから、見ていて笑いそうになる。

俺は同じにしてほしくないけど。



「もう通院はそろそろ終わるんで。だからそれはいつか、山本先輩に彼女が出来たときのデート代にでもしてください」


「……なら、お前が彼女とのデートに使えばいいだろ」


「俺、こう見えて独占欲の塊なんですよ。友達に渡された金でデートするなんて無理。
そんなのしたら次の試合でころ……半殺しにしますから、先輩」


「…友達…、てかお前いま“ころす”って言いかけたよな…?それに俺……今年卒業だけど」



大学でもやるんでしょ、と。

サラッと返した俺の言葉に、表情を歪ませながら封筒をしまった先輩。



「…え、てかお前やっぱ彼女いんの。イケメンすげーな」


「……婚約者がいます」


「はあ!?婚約者!?マジ…!?イケメンすげーな!?!?」


「そうそう、もっと広めてください」



広めろ、もう隠したくないんだよ俺だって。


「由比さんは俺の婚約者だ」って全校生徒に言ったっていい。

けど、彼女はそれはたぶん望まないから。


だからそう、順序が大切なんだ物事には。


まずは由比さんに会いたい、抱きしめたい、触りたい、今はただそれだけ。