「…やっぱり、誰かにしてしまったことは自分に返ってくるんだよ…。俺だって、結局は横山に騙されて終わった…」


「…山本先輩もあいつに良いように使われた駒ってことですか」


「…そうだ、…ほんと、情けねーよな…。部でもハブられてんだよ俺…いま、」



許せない。

この人に対してじゃなく、俺は横山 あいりが許せない。


どれだけ周りを巻き込んで、傷つけて、その上でも自分の欲だけを優先させるつもりだ。

そんな女に俺が惹かれるわけないだろ。


そんな女と関わって俺が幸せになれるわけないじゃないですか、由比さん。



「…でも、アキレス腱断裂までにはならないように止めてくれたでしょ、山本先輩」


「あ、当たり前だ…!そんなの、出来ねーよ、」



もっと強く足を蹴って引っかければ良かったのに、この人はそうはしなかった。

それは俺も分かっていて、中途半端だったからこそ審判も判定が難しくて反則負けにはしなかったのだ。


それが、山本先輩の理性がギリギリで止めてしまった優しさだったのか。


俺は最悪ほんとうに、剣道が2度とできない足になってたかもしれないのだから。