「…ごめん、俺……、わざと…やったんだ」
耐えられなくなったんだろう。
もう、隠し通すことに疲れたんだろう。
自分からこうして言ってくるってことは。
カランっとグラスに入った氷が動いて、俺はじっとそんなものを見つめながらも結局は由比さんのことを考えてしまっていた。
由比さんは隠し通した。
周りからどんな扱いをされても、俺に嘘をついてまでも、耐えていたんだと。
「…だれの命令で?」
「っ、……横山…あいり、」
とりあえず冷静さを装いつつも、心は怒りでどうにかなりそうだった。
だから冷ますようにウーロン茶を喉に通す。
「ごめん…っ、ごめん櫻井、…どうしても横山はお前が欲しいらしくて、怪我させろって、アキレス腱を断裂させろって……」
山本先輩がどうしてそんな命令を聞き入れたのか、そんな理由はどうでもいい。
だけど、その謝罪を向けるなら俺じゃなく由比さんに向けて欲しいと思った。
そして俺も謝らなくちゃいけない。
あんなにも自分を消してまでも、俺を守ろうとしてくれた彼女に。



