あ…、崩れた。

先生が大学生くらいに見えた、一瞬。



「しないしないっ、するわけない!…好きな人にしか…こんなことしないよ」


「…絶対すんなよ、約束だからな」


「うん!あたし、約束だけは絶対守るから!」



約束を破る人間だけは無理、だいっきらい。

それがあたしの生きるうえでのモットーだ。



「丹羽くんってどんな子がタイプ?年下?ねぇ年下でしょ?」


「……」



あたしのタイプはね~、ジャージ姿が似合ってて、無造作にくしゃっと揺れる黒髪で。

いまだって生徒の声をちゃんと聞いてくれて、こんなうるさい女子生徒の相手をしてくれる物好きさんで。



「俺のタイプは…友達を助けられる、勇気ある子かな」


「───…えっ!?それあたし…!?あたしだよね!?あたしじゃんっ!!」


「それとメイクせず校則はきちんと守る、スカートも短くなくて髪も巻かないような、
まぁ一番は…卒業まで俺を一途に想いつづけられる子だ」


「そっ、卒業まで想いつづけるよあたし……!!!」



ふっと笑った先生は、あたしに顔をそっと近づけて。



「あいたっ!!もーーっ!」



今はまだ、デコピンをおでこに食らわせた。