俺の世界には、君さえいればいい。





「だから、…感謝してる」


「……え、」


「由比さんのことも…泣かせてくれて助かった。本当は俺がそれをさせてやりたかったけど…、
とりあえず俺ちょっと確かめたいことあるから行くわ」



きみはお礼が言える人だったんだ…。
あ、でも確かにかなのも言ってたっけ。

剣道が有名な、名のある由緒正しき名家の息子だって。


だから礼儀はあるって、そういえばかなのにはいつも敬語だしね。

ってことはあたしには礼儀を向けられてなかったってことかーーい。



「あっ!それと!次かなのを泣かせたら許さないからね……!!」


「…わかってる」



これがいちばん言いたかったこと。

友達のあたしがすることはこれくらい、あとは婚約者のこいつに任せる。


お似合いだと思うよ?あたし。

由比 かなのと櫻井 主計は。



「───それで?お前はいつ俺に屋上のカギ返しに来るのかなぁ、笹倉」


「えっ、わっ!丹羽くん!」


「……丹羽くんってなんだ。俺が先生って知ってるか」



無表情プリンスを追い出した次は、あたしが片想いする男の登場。

実はこの先生に屋上のカギをこっそり借りていた。