「毎回毎回あんたとの噂が立つ度に女子に馬鹿にされるわ、クラスメイトには“消えろ”なんて言われるわ、
足ひっかけられて水被るわ靴底にガムくっ付けられるわ、…お弁当は捨てられるわ、」
なんかもう、言葉にするだけであたしがつらいんですけど。
泣きたくなってくるんですけど。
あの子、これいっつも1人で受けてたって。
あんな大人しそうな顔して忍耐力だけは鬼すぎんのよ、鬼。
「仕舞いには吐き出すくらいのチョコ貰ってさ」
「…だれの…はなしだよ、それ…」
そんな反応だけで、本当にかなのは隠しとおしてたってことがわかる。
そしてこいつの情けなさを同時に痛感した。
「それで…本当は大好きで大好きで仕方ないのに、その婚約者の幸せを一番に願って……あえて離れる選択をしちゃって。
そんなことすれば大泣きするのが普通じゃない?」
それはもう簡単だった。
そっと手を差し伸べてみただけで、ガタガタって崩れちゃうんだもん。
それくらい我慢していて、いまにも壊れそうな心で毎日過ごしてたってこと。
「さぁ問題です。だれの話でしょーか」
「……それをぜんぶ裏で回してたのが横山ってこと?」
「たぶんね。あたしはそう解釈した。けど、かなのはそこまでは言わなかった」



