俺の世界には、君さえいればいい。

優子side




「部活あるんで」なんて言われれば、「サボれ」と即答。

「日直なんで」なんて言われれば、「クラスメイトにやらせろ」と即答。


「暇じゃないんで」なんて言われたならば、「振られて暇だろ」と傷をえぐる。


よし、なんとか誘い出す煽りはこれくらいかなっと。

頭の中でシミュレーションしながらお隣クラスへ迷いなく向かった、ある日の放課後。



「話、あんだけど」



ドアの前でなんて、届かない。

だから1年A組に無断で上がり込んでまでも、教科書をリュックに詰め込む人気者の前に立ったあたし───笹倉 優子。


一番の友達には“ゆっこ”なんて愛称で呼ばれている。



「えっ、なに、告白…!?」


「まさかの呼び出し!?」



騒ぎ出す周りの害虫共を気にすることなく、もう1度「話、あんだけど」と、まったく同じ言葉を繰り返した。


じっと見つめ合うこと数秒。

ちっくしょう……顔がいい。



「わかった」


「え!?マジ!?お前いつも断ってたじゃん主計…!!」



かなのはもう、とっくに学校を出ている。

まさかあたしがこうして櫻井 主計を呼び出してるなんて思ってもいないだろう。