お母さんとお父さんにはなんて言おう…。
振られたって言おうかな。

ごめんなさいって、しきたりを破っちゃったって。


お父さんは由比家に迎えられたお婿さんで、お母さんと出会ったのも私たちのように16歳になったときだったという。

だからお父さんとお母さんも、しきたりの上に成り立った夫婦。


けれどお母さんは「お父さん以外は考えられない」と、私に話してくれたことがあった。

たとえ親が決めた相手だとしても、そこから愛情が生まれることだってあるの───と。


だから私だっていつか、いつかは、櫻井くんとはお父さんとお母さんみたいになれるんじゃないかって。



「うぅ……っ、ぅ…っ、」



終わったんだ…。
ううん、私が自分で終わらせちゃったの。

あんなにも悲しそうな顔をさせて、私のことが大嫌いになっちゃったかもしれない。


櫻井くんのことを嫌いになんかなれるわけがないのに、彼にあんな言葉を言わせてしまった。

そんな自分が嫌で嫌で、それでもこれが一番いいんだって。


櫻井くんが大好きだから、誰よりも大切だから下した決断だった。



「ーーーい、ーーおい、~~か、おい!聞いてるのか由比!!」


「───っ!ごっ、ごめんなさい…!!」