ぐいっと手が引かれたかと思えば、ピタッと止まる。

「上履きのままですね」と、私の足元を見つめるように伏せられた睫毛は長くて。


やっぱりこんなにも近くで見ると、直視も出来ないくらい申し訳なくなってくる…。

掴まれた手だって男の子の力だからほどくことも出来なかった。



「たしか由比さんの家は3個目の駅ですよね」


「…は、はい…」



なんか……手、引かれてる。

手を、引かれているような気がするのですが、これはもしかしてこのまま家に到着するまでなの…?


ローファーに履き替えて昇降口を出て、校門を出て。

駅に向かえば、ちらほらと同じ制服姿の生徒たちが散らばっていたから。



「あっ、あの…!こっちのほうが近道でっ」


「そうなんですか?」


「はい…っ」



だから私は、そこって道なの?なんて思う細い路地裏を指差した。

近道なわけがない。

むしろ遠回りになってしまうけど、ここからなら生徒にバレず時間つぶしすることができそうだから。



「…やっぱりやめましょう。こっちは危ないです」


「…え、」


「俺と離れて歩きたかったらそれでいいんで」