だけど特別。
私はこんなにつまらなくて取り柄もなくて地味だけど、気持ちは本物だということ。
それを表すために。
櫻井くんはきっとたくさんのチョコレートを貰ってる。
告白だって受けたかもしれない。
『C組の関さんが呼び出してたって…!』
『うそ!抜け駆けじゃん…!!でもそんな勇気あたしにはないもん~!!』
休み時間に聞こえたクラスメイトの興奮したような声は、放課後の教室に残る私の頭に今も駆け巡っていた。
日直だったこともあって、普段よりゆっくり書いた学級日誌。
待ち合わせ場所は昇降口、1年生の下駄箱前。
「どうしよう…、心臓おかしくなりそう…」
ぐるぐる考えていたら、つられるように苦しくなってきた。
誰かに気持ちを伝えることってこんなにも緊張するんだ…。
「糖分…、甘いもの…」
どんな反応をしてくれるかな、練習どおりに上手く言えるかな、そんなことばかりを考えていたから。
咄嗟に身体が甘いものを欲していた。
頭を使いすぎたときは糖分だ。
いまちょうど気軽に食べられるものは───…後藤さんから貰った型抜きチョコ。



