「由比さん、」
下駄箱から手にしたローファーを落としそうになった、とある放課後。
まさかまさかの男の子から声をかけられたために、私はとりあえずキョロキョロした。
……よし、今のところ見知った顔は近くにない。
「さ、櫻井くん。どうかしたの…?」
「今日部活ないんで…送っていきます」
「……」
確かにブレザー姿だし、今日はどの部活も休みらしいけれど…。
でも櫻井くんに送ってもらうってことは……
一緒に帰るってことだ。
「由比さん?」
「───あっ!大丈夫です…!ひとりで帰れるので…っ」
「最近この付近で物騒な事件も聞くし、これも俺の役目ですから」
あ、そういえば…。
ひったくりや強盗が増えてるから気を付けるようにって、朝の全校集会で校長先生から注意を受けたばかりだけど…。
でも私と歩いているところなんかを誰かに見られていたりしたら、明日には噂が回っちゃう。
「…俺の護衛では不安ですか」
「えっ、ううんっ…!そうじゃないです…!そうじゃ…ないんです、けど…」
「じゃあ行きましょう」
「わっ…!」



