そしてやってきたバレンタイン当日の朝は。
校舎に入ってから……いや、そもそも電車の時点で空気感がいつもと違った。
駅には他校の生徒だって集まっていて、女の子はみんな可愛い袋を手にしていた。
男の子は朝からそわそわと落ち着かない様子で。
「おっはよーかなの!はいこれっ!バレンタイン~!」
「ありがとうゆっこ!私もこれ…」
「えっ!なにこれガトーショコラ!?美味しそ~!!」
甘すぎないようにして、上にはチョコペンでデコレーション。
案外簡単なんだよ、と笑った私をむぎゅっと抱きしめてくるゆっこ。
そこまで喜んでくれなくても……。
「ゆっこ…!くるしいっ」
「無表情ムッツリプリンスにも渡すの~?」
「っ…!」
ニヤニヤしながら、こそっと言ってくる。
そういうことだったんだ…。
こうして友達同士わちゃわちゃ仲良くしていれば、クラスメイトがいる中でも会話できる。
まさかそんな話をしてるなんて誰も思わないだろうから。
「う、うん…、喜んでくれるといいな…」
「あんなやつ、かなのから貰えるならチ○ルチョコひとつでも喜びそうだけどねぇ~」



