俺の世界には、君さえいればいい。





剣道部とも関わりがあって、私のことだって知っている人ってことになる。


そんな人は───…思い付くかぎり1人だけじゃないかって。


だけど、そうとも言い切れないところもあるのだ。


だって私と櫻井くんが婚約者だということを学校中に広めたほうが、その存在にとって私を苦しめることが出来るのに。

彼女はそうはしていないから。


だから横山さんではないのかなって、思っている部分のほうが大きい。



「さ、櫻井くん…!」



主張するように名前を呼んでみると、考え事をやめてすぐに顔を向けてくれる。


どうかしましたか、
なんですか?なんでも言ってください。

櫻井くんの目だけで十分に読み取れてしまう優しい気持ちだ。



「櫻井くんは…えっと、甘いもの、すきかな…」


「…あまいもの…?」


「チョ、チョコとか……すき…?」



堅苦しい話は今は終わりにしたかった。

だって、せっかく櫻井くんと2人きりになれてるから…。


すると櫻井くんは何かをぐっと堪えるようにしながらも、ゆっくり近づいてくると。



「わ…っ、」



そっと、包み込むように私に腕を回した。