俺の世界には、君さえいればいい。





震える声で反応した私に、櫻井くんは間を取らずにうなずいた。



「そう考えてしまうくらい、俺が知ってるあの人は悪い人じゃないんで」



試合が終わって、表彰式も私は最後まで見ていた。

櫻井くんには負けてしまったけれど、その選手は順位として見れば輝かしい3位。


それなのに全然嬉しそうじゃなかったから、違和感があったことを覚えている。

なにかに後ろめたさを感じているような、心からの笑顔ではなくて、むしろ顔は引きつっていた。



「なので命令したそいつを俺が見つけて殺します」


「えっ、だ、だめだよ…!そんな危ない言葉は使っちゃだめ…!」


「…じゃあ、半殺しにします」



変わらない、そこまで変わらないよ櫻井くん…!


でも私も泣いてしまったし、その選手とは良きライバルでもあったのだろう。

櫻井くんは無表情ながらにもキレていた。



「それを片付けないと…俺だって由比さんに気持ちを伝えられませんから」


「っ、」


「だから早く見つけてころ……半殺しにします」



まだ本当にそうかも分からない。

けれどもし、その選手に命令をした存在と私に嫌がらせのようなものをした存在が同一人物だったとするなら。