俺の世界には、君さえいればいい。





お父さんもお母さんも反対なんかしなかった。

「かなのの人生なんだから好きに生きなさい」と、背中を押してくれて。


そうやって私が家柄を隠してまでも生活できているのは、もちろん家族の支えがあったからだ。



「っ…、っ、」



ぐちゃぐちゃになったお弁当を見つめて、大好きな笑顔を思い浮かべると胸が痛い。

こんなこと、お父さんとお母さんにも言えない……。


消えろ、なんて。

そんな悲しい言葉は誰かが誰かに送るなんて絶対にしちゃいけないことだ。



「由比さん…?───!!!」



たまたま通りかかった櫻井くんは、裏庭に立ちすくむ私が泣いていることに気づくと。

血相を変えるように走り向かってくる。



「これ…由比さんのお弁当…?」


「…うん」


「誰に…泣かされたんですか、クラスメイトですか?それとも……剣道部のマネージャー?」


「…わからない、」



怒っている。

櫻井くんは落ち着けるように深く息を吸って吐くと、私の手を引いた。


それは私がこんな仕打ちを受けた理由に、自分が関係しているんじゃないかって思っているからだろう。