「っ…!!」



そんなことを思ったら、居ても立ってもいられず覗き見は中断。

すぐに走って下駄箱に逃げた。


いつか私もするのかな…。

櫻井くんと、櫻井くんと……ほっぺだけじゃなくて、ゆくゆくは───…唇に。


だって婚約者だから、つまりは結婚で。


結婚ってことは…その先もずっと一緒にいるってことで。

普通とはちがう形からのスタートだけれど、そこには愛情だっていずれは入ってきたりするのかな…。


そうだといいな…。



「…でも私と櫻井くんは……お付き合いでは、ないんだよね…」



いきなり婚約者だから。

お付き合いとか、そういう順序なんか簡単に飛び越えてしまっていて。


ちょっとだけ憧れてた。

私の彼氏はこの人ですって、誰かに紹介したりするの。

女の子なら1度は誰だって憧れると思う。



「求めすぎ…!求めすぎだよ…っ、いまだってありえないくらい幸せなのに…」



自分の中に生まれつつある貪欲な部分と、どうしようもないわがまま。

考えないように頭を振って上履きを履いたタイミング───



「きゃっ…!わ…っ!!」



どてっと、転んだ。