櫻井くんの覚悟が含まれる目。
彼が言う「そうなった場合」とは、学年だけじゃなく全校生徒にまで広まってしまった時ということだろう。
そうなった場合、もう誤魔化さないって。
隠さない、ちゃんと言うって。
それは確実に私を守ろうとして言ってくれていること。
「…でも私は…、家柄のことは誰にも言わないって決めてて…っ」
「はい、なので俺もそこはちゃんと考えてます。俺を信じてください」
こくんっとうなずいて、それぞれの教室へ何事もなかったかのように移動した。
櫻井くんも私も、それくらいの覚悟で過ごさなくちゃ。
次はどんな噂を立てられるんだろう…。
どんなことを言われて、もしかすると嫌がらせなんてこともあるかもしれない。
「おっはよ~!かなの!」
「ゆ、ゆっこ…、おはよう」
「あけおめ!今年もよろしくーう!」
………あれ?
教室に入ってから真っ先に挨拶してくれたゆっこは冬休み前と同じ。
私を目にしたクラスメイトがとくに気にしてこなかったのも、今までどおりで。
変わらない……。
ぜんぜん変わってない1年B組。



