剣道部のマネージャーさんこと、横山さんに櫻井くんが告げてしまったあの日。

そのときはちょうど冬休み中だったけれど、きっと噂の広まり具合は前より高レベルなものになってるはず。


横山さんは私をよく思っていないところがあって。

そしてあのときだって、櫻井くんの言葉を「信じられない…」なんて目で見ていた。



「由比さん、」


「っ!さ、櫻井くん…、」



───と、下駄箱前にていきなり声をかけられてしまった。


いつも以上に挙動不審な動きをしていた私だったから、気になったのかもしれない。

とりあえず今のところ……周りは大丈夫そう。



「お、おはよう…」



軽く頭を下げてすぐに去るつもりだった。

それでも櫻井くんは、まるで道を通せんぼするように近寄ってくる。


いつもなら緊張でどうにかなっちゃいそうなのに、今日は彼もまた違う顔をしていて。

それは櫻井くんの“守りますモード”だ。



「…もし何かあったら、俺に言ってください。どんな小さなことだとしても絶対に言ってください」


「櫻井くん…、」


「そうなった場合、俺は隠し通すつもりはないんで」