くるっと振り返った友達。

今までとは少しちがう空気感に、思わず緊張してくる。



「そ、それは…、櫻井くんにも迷惑だろうから…」


「迷惑ってどういう?」


「ほら……今の時代で、それに高校生で親が決めた政略結婚みたいなものだし、
人気者の櫻井くんだから…、女の子たちは放っておかないだろうし…」



さっきだってそうだ。

あんなふうに自ら出会いを起こしてまでも彼に近づきたいと思っている女子生徒はたくさんいる。


同学年だけじゃなく、きっと先輩にも。

来年は後輩だって出てくるだろう。



「そんな櫻井くんの婚約者が私だなんて、櫻井くんも周りに知られたくないだろうから…」



どういう気持ちで彼はこの話を受けてくれたんだろう。

それを考えると、家柄の理由以外はないんだろうなって無性に悲しくなる。


もしかすると彼女さんがいたかもしれない。
好きな女の子だっているかもしれない。

ほんとにこれでいいのかなって、毎日のように思ってしまう。



「かなの!あんたは可愛い!!」


「…へ…?」


「あたしが男だったら、ぜったいこんなにも謙虚な女の子を彼女にするわ…!!」


「あ、ありがとう…」