俺の世界には、君さえいればいい。





「由比さん…ちょっといつもと違いますね」


「あっ、おばあちゃんが着付けてくれて…」


「いや、着物もそうなんですが……顔も、」


「こ、これは…お母さんがしてくれて…」



着物すごく似合ってます、メイクもかわいいです───俺が言いたかったセリフはこれだ。


なのに全然言えない俺は何なんだよ…。

言いたい言葉が何ひとつとして口から出てくれない、由比さんを前にするといつもそうだった。



「に、似合ってないよね……、私も違和感しかなくて、」


「え、いや!!全然そんなことないです!!……あ。」



神社に到着して、まず目指したところは鳥居を入ったまっすぐ先に構えられている大きすぎない拝殿。


思ったより長く続く列に並ぶ中、俺の声に生まれた一瞬の静寂。

周りはくすくす笑いながらも元通り。



「あ、ありがとう…」



照れるように小さな声で答えてくれる由比さんからは、「気をつかってくれて」なんて付け足されたような気がした。


そうじゃない。

俺は本当に由比さんしか見えてない。


地味、大人しい、それだけでいつも縫い付けられてしまう由比さんのイメージは。

自分たちと違うからって、たったそんな理由で学校でも女子は馬鹿にするってこと。