俺の世界には、君さえいればいい。

櫻井side




「櫻井くん…!」



年が開けて3日目。

待ち合わせ場所に息を切らして走ってくる姿を見たとき、俺はすぐに地面を蹴った。



「わっ、櫻井くんまだ足が完治してないから走っちゃだめだよ…!」


「由比さんも転んだらどうするんですか!」


「私は着物には慣れてるから…っ」


「お、俺も怪我にはなれてますから!」



お互いがお互いを心配してしまって、似たような言い訳を述べて。

くすっと同時に吹き出してしまったのは、年明けもこうして会えた嬉しさがあったからだろう。


初めて由比さんと向かう初詣。


由比グループの一人娘だから想像していないことはなかったとしても。

いざ着物姿の由比さんを前にすると、余裕な反応は出来そうにもなかった。



「あ、明けましておめでとう…櫻井くん。今年もよろしくね」


「こちらこそ…明けましておめでとう、ございます」



クリスマスも会って、大晦日も元旦も電話で同じ挨拶をしたというのに緊張は新しく更新されてゆく。


今年はどんな年になるんだろう。

もっと由比さんとの思い出が増える1年になればいいと、神社を目指して歩きながらも願った。