「バカね~!置くわけないでしょ~!むしろあたしは無表情プリンスの知られざる顔?みたいなものが見れて嬉しいわっ」
無表情プリンス…。
どうやらゆっこは櫻井くんをそんなあだ名で定着させたいらしい。
「知られざる顔って…挨拶してくれただけだよ…?」
「はっは~ん、あんた気づいてないな?あのプリンス、かなのを見つけた瞬間すっごい優しい顔してたけど?」
え、全然そんなふうに思わなかった…。
というより、櫻井くんは確かに表情の変化は分かりにくいけれど、いつも温かい目をしてる。
「あ~、なるほどねぇ。意外とムッツリな王子様ってことだ」
「そっそんなことないよ…!ゆっこ、櫻井くんに変なイメージ縫い付けないで…!」
「あ、そろそろ授業。行くよかなの」
「ゆっこっ、このことは誰にも秘密だよ…!」
「わかってるって」と、不安な返事が返されたけど…。
ここは友達を信じたい私もいるから。
それにゆっこは“約束を破る人間が一番きらい”だと常に言っていて、そんな彼女だから私も話したのだ。
「もちろん櫻井くんにもだよ…?」
「え、それはなんで?」
「えっ…」



