俺の世界には、君さえいればいい。





櫻井くんはだいぶお母さんとも打ち解けてきたみたいだった。


日々の生活を話して、学校での様子を伝え合って。

お母さんもお父さんも普段見れない娘の話を興味津々に櫻井くんから聞いていた。



「櫻井くんでしょう?文化祭の、かなのの写真を撮ってくれたの」


「…あの、ごみの分別の写真ですか?」


「そうそう。出来れば正面からの写真を期待してたんだけど…でも、あれが私の娘なのよねって嬉しくなっちゃった」



わ、お母さんやっぱり分かってたんだ…。

あの1枚しか結局送れなかったけれど、お母さんは「十分」と笑って言ってくれたから。



「…俺が思う由比さんの良さは、たぶんああいうところなんだと思います」



すると櫻井くんは箸を置いた。

目の前の両親を前にして、心から伝えたいことを届けるように。



「いつも由比さんは見返りを求めないんです。裏表がないというか、いやらしくないというか……。
だから俺、そんな由比さんに憧れてる部分もあって」



櫻井くんを前にした2人はアルコールがすこし回っているはずなのに、その目は続きを待っていた。

私も静かにグラスをテーブルに置く。