俺の世界には、君さえいればいい。





「由比さん、クリスマスイブにかけ声をする子にはサンタさんが来やすくなるって…俺どこかで聞いたことがあります」


「えっ、そうなの…!?」



あっ、思わず声を張ってしまった…。

ガタッとテーブルが揺れて、そんな私を見て微笑ましい顔をしてる親ふたり。


櫻井くんは優しい優しい眼差しで、だけどほんのり熱を帯びる……そんな初めての顔。



「あ、じゃあ…えっと、みなさん、」



ここはもうやるしかない。

サンタさんの名に懸けてだ。



「め、メリー…クリスマース、」


「「メリーークリスマーーース!!」」



私の声をかき消してしまう、お父さんとお母さんの声。

カンッと、グラスに入ったシャンメリーが跳ねた。


「メリークリスマス」と、櫻井くんは小さく言ってくれる。


まさか隣クラスの人気者の男の子とクリスマスイブを過ごせちゃうなんて…。

どうしようどうしよう、こんなことしていいのかなって、誰かに謝りたい気持ちでいっぱいだった。



「櫻井くん、お味はどう?」


「ぜんぶ美味しいです。とくにこの巻き寿司、こんな色とりどりなの売ってるんですね」


「ふふふ、私の手作りなのよ~」


「え、すごい…」