「実はこれ、かなのがやってくれたんだ」
「由比さんが…?」
「あぁ、単なる虫刺されだというのにね。手際がよくて俺もびっくりしたよ」
「……」
恥ずかしくなってキッチンに逃げた。
絶対に今の説明だけで察してしまったはず…。
あんなの素人知識だし、櫻井くんの目から見たらまだ全然かもしれないけれど、私なりに頑張って実践したものだ。
家に案内する前に、私は櫻井くんの足の様子を聞いてみた。
あれから接骨院に通ってリハビリを週3で行っているらしく。
腫れも引いて、今はすこし背伸びが出来ないくらいで、それ以外は問題ないらしい。
「櫻井くん、炭酸のめるー?」
「あっ、はい」
「じゃあかなのと櫻井くんはシャンメリーね。お母さんたちはシャンパン~」
るんるんと鼻歌を歌いながらグラスに注ぐお母さん。
これでパーティーの準備は整った。
4人にしては大きなローテーブルの上には、お母さん力作の手料理。
それを見て櫻井くんは「…すげぇ」と、素のまま小さくこぼした。
「じゃあ…かけ声はかなのがする?」
「えっ、い、いいよ…!お母さんして、」
お父さんの隣にお母さん。
私の隣に、櫻井くん。
慣れない中でグラスを片手に持ち上げる。



