俺の世界には、君さえいればいい。





雪は降ってはいないみたいだ。

ふわふわと、降ってはいないけれど私の頭の中は浮かれ気分。


ドキドキしながら待って、ドキドキしながら準備して。

だいぶ日も落ちかけたタイミングで鳴ったインターホン。



「ほ、本日は…大変お日柄もよく、誘っていただき、本当に誠に心から光栄に、」


「わぁ!初めまして櫻井くん!かなのの母です。話に聞いてたとおり好青年で格好いい子ね~」


「えっと、あっ、櫻井 主計と言います、由比さんとは同じ学校で…家は剣道場を、」


「ふふっ、かなのの婚約者なんだもの。もちろん全部知ってるわ。固い固い、もっとリラックスしてくれていいのよ」



玄関に迎えて開口一番、堅苦しい挨拶をして頭を下げた櫻井くん。

なんていうか……ものすごく緊張しているようだった。


櫻井くんは私のお母さんに会うのは初めて。

あの日、お父さんに連れられて顔合わせをしたときは、櫻井くん側もお父さんだけだったから。


だから私もまだ彼のお母さんには会ったことがなくて、そのときが来たらきっと今日の櫻井くん以上に固くなっちゃうんじゃないかな……と。



「あの…これ、良かったら食べてください。俺の母さんが好きで…有名なところのプリンなのですが…」


「あら!そんな気つかわなくていいのに!ありがとうね~」