半目がちのサンタさんは、今にもあくびをしてきそうだった。
砂糖で細かく作られたひとつ。
「あの、これ…ください」
「わぁ本当?ねぇあなた!売れたわよ自信作!かなのちゃんが買ってくれたわ!」
「うおまじかっ!ありがとうかなのちゃん!」
レジカウンターに立つ奥さんと、それを作った旦那さんは奥の厨房でケーキを作りながらも笑顔を向けてくれた。
頼んでいたケーキに追加させた、ひとりの眠たそうなサンタさん。
私がこのサンタさんに目が向かった理由は、可愛かったのもあるけれど…。
なにより似ていたからだ。
ぼーっとしているのに優しさを感じる表情が、どこか櫻井くんに。
「今年は櫻井くんも一緒だね」
カランカランと、今度はベルの先。
大事に抱えたホールケーキを落とさないように歩きながら、その袋の中に入っているもう1人の櫻井くんにつぶやいた。
「なら誘ってみればいいじゃない!」
「……え、」
「お料理もこんなに作りすぎちゃったし!毎年あまっちゃって大変だもの~!」
大変だものって……。
だったらもう少し量を考えて作ればいいんじゃないのかなぁ、お母さん…。