キッチンではお母さんがオーブンにチキンを入れたところだった。

そんなテーブルにずらっと並ぶ、どれも手作りの料理たち。


ツリーのようになっているポテトサラダには、ブロッコリーや星形のチーズが可愛く飾られて。

ローストビーフに色とりどりのポトフ、そしてお酒のおつまみとなるお洒落な盛り合わせ。


あとは巻き寿司を作るらしいのだけど…今年もお母さんは張り切ってる。


そう、これが我が家の毎年恒例クリスマスの光景だった。



「かなの、ひとりで大丈夫か?お父さんも一緒に行くか?」


「ううん、平気。毎年お世話になってるお店だし、私もう高校生だよ…?」


「そうだったな、頼りある格好いい婚約者もいることだし!」


「っ…、い、行ってきます…!」



ケーキだって簡単に作ってしまいそうなお母さんだけど…。

どうやらそのお店の生クリームのきめ細やかさと濃厚さ加減は出せないらしいのだ。


だからケーキだけは、住宅地の入り込んだ中にある夫婦で営む“カトレア”さんに毎年お願いしていた。



「こんにちは…!」


「あ!かなのちゃん!毎年ありがとうね。とびきりの出来てるよ~?」


「本当ですか…!こちらこそありがとうございます…!」