「俺…、由比さんのことは───」


「ま、まって…っ、まってください…!」


「え……。」


「足っ、足が治るまで聞かない…です!
それで私がテーピングを巻けるようになるまで……言わないで…、」



ちょっとだけ怖かった。

由比さんのこと“が”じゃなくて、“は”だったから。


期待していたものと違ってて、そうなると答えも違うんじゃないかって。

だからそんな理由を付けてまでも引き伸ばしてしまった。



「あっ、やっぱり……1位とるまで、優勝するまで……言っちゃだめ、」


「…俺は当分のあいだ試合には出させてもらえないだろうから…、
それってもしかすると2年生になるかもなんですけど」


「う、うん、そのときで…大丈夫、」


「……」



それまでには櫻井くんの気持ちはまた変わるかもしれない、変わって欲しい、なんて思いに懸けて。


だって「由比さんのこと“は”」ってことは……由比さんのことは無理です、とか。


そんな言葉かもしれないから…。

そんなの聞いたら立ち直れない…。



「…じゃあその分…もうすこし……このままで、」


「っ…、」


「…苦しく、ないですか」


「……うん…」



冬の風は、私たちの熱を冷ますには全然足りなかった。