「だからどうしても格好いいところを見せたかった。
…ただそれだけ。そんな理由で、俺が誰にも言わないで欲しいって彼女に頼みました」
ずっと、ずっと隠してたこと。
私が隠しつづけていたことで、高校卒業するまで隠し通すつもりだったこと。
それを初めて明かしてしまった相手が、櫻井くんと並ぶと誰もがお似合いだと思ってしまう、2年生のアイドル的な先輩だなんて。
「だからあまりかなのを責めないでやってくれますか。……ムカつくんで」
「っ、ちょ、ちょっと、なに言ってるの…?嘘でしょ…?
だってこんな目立ちもしなくて地味な女が…櫻井の婚約者……?」
「だからそれがムカつくって言ってんだろ」
無表情の上に無表情が重ねられると、冷めた目付きに変わって。
それを受けた側は「このひと怒ってるんだろうな」って、すぐに感じ取ってしまう。
低い声で、こんなにも可愛い人を前にしているのに、そのうしろに居る地味女を庇っちゃってるんだから。
かなのって、何度も名前を呼んでくれて。
あぁやっぱり離れることなんかしたくない。この人に恋して良かったって思っちゃってる…。



