「う〜ん……」

圭も歩同様、家に帰ってからずっと何を作るべきか迷っていた。弟と妹がいるため、料理はすることがあるものの、お菓子作りは一度もしたことがない。

「レシピを見てもあんまりわからないし、ここはレシピじゃなくて女子に頼るか」

妹にどんなチョコが作りやすいのか、どんなチョコが貰って嬉しいものなのか、それを訊くことを決めた刹那、妹が「ただいま〜」と言いながら家の中に入ってくる。

「おかえり!ちょうどいいところに来たな」

圭が出迎えると、バレンタインに向けて作るチョコレートを手に持った妹は不思議そうに首を傾げる。

「実はーーー」

妹にこのような話をするのは恥ずかしいが、事情を教えないと協力してもらえない。圭は学校で歩たちと話したこと全てを伝え、「どうしたらいいと思う?」と訊ねる。

妹は顎に手を当てて考え込み始め、静かな部屋には時計の音がカチコチと響く。しばらくしてから、妹は口を開いた。

「その争奪戦ってさ、みんなチョコを作るんだよね?」

「うん。そうだよ」