そして、男子が朝からソワソワし、女子が友達とチョコレートを交換したり、好きな人に告白をしようと顔を赤くするバレンタインがやってきた。

歩たち四人も作ったチョコレートを持ち、どこか緊張した様子で教室に入る。

「あれ、持って来たよな?」

圭が言い、「もちろん!」と三人が頷く。陸斗が明を見てニヤニヤと笑う。

「てっきり、明は忘れてくると思ってた」

「はあ?こんな大事なこと、忘れたりしやんし」

「なら、係の仕事も忘れるなよ」

「そんなん、陸斗に関係ないやろ!」

明と陸斗がくだらない言い合いを始め、それを止めることなく歩の肩を圭が叩く。

「それで、いつ結衣を呼び出す?」

「ん〜……」

歩がチラリと結衣を見れば、結衣は友達に友チョコを配っている。配っているのはガトーショコラのようで、友達が「めっちゃおいしそう!」とはしゃいでいる。

「ありがと〜!初めて挑戦したからうまくできてるか心配だけどね」

友達と笑い合う結衣に男子二人が見惚れていると、視線に気付いたのか結衣と目が合う。このチャンスを逃すまいと、歩は結衣の手を掴んだ。