「よし、始めますか!」

エプロンをつけ、服の袖を捲った陸斗の目の前には、必要な材料は全て揃っている。告白戦争がなくても今年もチョコレートを用意するつもりだったのだ。

「この日のために、しっかり練習してきたから、一番おいしいのを食べてもらおう」

去年はザクザクした食感が楽しいクランチチョコを作り、結衣に渡した。料理やお菓子を作るのが陸斗は好きで、この好きなことを活かせてよかったと去年のバレンタインは思ったのだ。

「まさか、男の子から貰えるなんて思ってなかったな。でも嬉しい!」

「海外では、男性から女性にプレゼントをあげるのが多いんだ。だから作ってみた」

「へえ〜、そうなんだね。ありがとう!」

去年のバレンタインの日のことが、陸斗の頭に蘇る。あの時、花が咲いたような笑顔を見て、さらに陸斗の中で恋が育ったのだ。

「今年も喜んでくれるといいなぁ……」

そう呟きながら、鍋に生クリームを入れて温め始める。作ろうとしているのはマカロンだ。