いつもの口調で答えた圭に対し、妹はグワッという効果音がつきそうなほどの勢いで目を見開き、圭の肩を強く掴む。

「お兄ちゃん、危機感なさすぎ!四人の中でとびっきりゴージャスで特別なチョコを用意しないと、お兄ちゃんの存在自体が霞んじゃうかもよ?」

「そんなことないだろ。結衣とは普通に話したりしてるんだよ」

結衣とは一年生の頃、同じ保健委員に入ったことで少しずつ話すようになった。委員会の仕事に真剣に取り組む姿に好きになり、教室でも積極的に話すようになったのだ。

「わっかんないよ〜?ショボいチョコだったらさ、「私への愛ってこんなものなの?」ってポイされるかもしれないじゃん」

好きな人へ渡すチョコレートは、ちゃんと綺麗に作って渡したい。だが、ゴージャスなものを作れる自信など圭にはなかった。

「俺、お菓子作りなんて初めてだけど」

「大丈夫!あたしがいるじゃん!」

そう言い、妹はキッチンにクリームチーズやインスタントコーヒー、ココアパウダーなどを並べていく。前に、イタリアスイーツの特集を見ていた圭は材料を見てピンときた。