首取り様4

「なんで私の首を切ったの!?」


まだ青い顔をしている実里が這うようにして大輔に近づく。


その顔には怒りが滲んでいて、大輔は戸惑った。


自分が悪いことをしてしまったという自覚は、もちろんなかったからだ。


しかし現に実里は大輔へ向けて怒りをあらわにしている。


「私は自分から望んで地蔵の首になったのに! なんで!」


実里は叫び声を上げて膝立ちになり、大輔の腹部を拳で殴りつけた。


「私はこの街に復讐したかったのに! 地蔵の気持ちを晴らしたかったのに!」


何度も何度も大輔を殴る。


その手には力が入っておらず、とても痛みを感じられるようなものではなかった。


だけど佳奈たちの胸にはたしかな痛みがジワリと広がっていた。


実里が地蔵の手助けをしたい理由はすでに知っていた。


だけどそれを阻止したのは確かに自分たちだった。


「やめろ」


柏木が低い声をかける。


しかし実里は目に一杯の涙をためて聞いていない。