青の先で、きみを待つ。




その日の昼休み。私は非常階段の踊り場でお弁当を食べていた。教室にはいづらいし、あれから美保は沙織グループにいて、私のところには寄ってこない。

先ほど濱田先生に会ってアンケートの話をされたけれど、いじめがあるとはっきり答えた人はひとりもいなかったと聞かされた。

中には『みんな仲良しでーす』なんて、ふざけたイラスト付きのアンケート用紙も含まれていたそうだ。

結局私がしたことは、なんの意味もなかった。むしろ、橋本さんの状況を悪化させただけかもしれない。

「あのさ、いらないならそれ食っていい?」

隣でパンを頬張っていた蒼井が、私のお弁当を指さしている。「ああ、いいよ。はい」と無気力に差し出したそれを、彼は勢いよくがっついていた。

「いじめのアンケートが配られたクラスがあるって噂になってたけど、お前のところ?」

「そうだよ」

いじめは隠れてしてるくせに、表沙汰になるとまるで祭りごとでも始まったかのように、周りは囃し立てる。そういうのが本当にうんざりだ。

「こんなところで飯食ってるってことは、とうとうぼっちになったの?」

「蒼井にはデリカシーってもんがないよね」

「図星だろ」

「そうですけど、なにか?」

もうこの際、開き直るしかない。食欲がない私とは違って、彼は私のお弁当まで秒で完食していた。それはもう、犬が舐めたのかなと思うほど綺麗に。