《いじめられてる、もしくはいじめている人を知っていますか? 名前をここには書けないと言う人はイニシャル、または先生に直接教えて下さい。尚、このアンケートの内容や回答を他者に公開することは決してありません》
私はゴクリと唾を飲み込む。
――『先生、クラスでいじめがあります。なんとかしてその子を助けてください』
先生にそう伝えた時、私は橋本さんや沙織の名前までは出さなかった。疑っていたわけではなかったけれど、先生がどのように動いてくれるのかわからなかったから慎重になっていたのだ。
でも、先生はこうしてアンケートまで作ってくれた。きっと休日を返上して、独自に制作をしてくれたんだろう。
先生ならなんとかしてくれる。私はいじめを受けている欄には橋本さんを。いじめをしている欄には沙織と、沙織のことを慕っている数名の女子の名前を書き込んだ。
私以外にも、どこからかシャーペン音がしている。誰がなにを書いてるかはわからない。
美保はプリントを見つめていて、橋本さん自身もなにかを書いている様子が窺える。
そして沙織はというと、他の人からの視線が気になるのか。あるいはいじめをしていたという認識がないのか、アンケートを裏返しにして、机に顔を伏せていた。



