青の先で、きみを待つ。




「あそこにブランコが見えるでしょ? 昔お父さんがよく私の背中を押してくれて、その姿をお母さんがよくスマホの動画で撮ってたの。でもね、本当はそんなことされてない。それは、私が作り出した幻の記憶だった」

真実はすべて現実世界にあって、以前彼に言われたとおり、ここでは私にとって都合よく物事が進んでいる。

「私の本当の家族は、冷えきっていて温かさもなにもない。離婚して家を出ていったお父さんは一度も私に連絡すらしてこないし、お母さんは私のことが鬱陶しくて目も合わせようとしなかったよ」

だから、学校で嫌なことがあっても話せない。私に()く時間すらもったいないという感じに見えていて、相談なんてできるはずがなかった。

「今の家族も学校も友達もみーんな偽物。なんか笑えるぐらいどうでもよくなっちゃった」

言葉とは裏腹に、また涙が絶え間なく流れていた。

「ねえ、ここじゃない別の場所に行ける方法ってないのかな。まだ完全に記憶は戻ってないけど悪いことはおそらくしてないと思うんだ。だからできたら天国とかに行けたらいいな」

幼い頃に本で読んだことがある。死んだら自分が望む姿になれて、みんな幸せに暮らせる街があるそうだ。

生まれ変わるタイミングも自分で選べるし、それは人間じゃなくてもいいって書いてあった。

私も人間はもう()()りだから、叶うなら鳥とか空が飛べるものがいい。