青の先で、きみを待つ。






学校に着いてとりあえず濡れた制服からジャージに着替えた。保健の先生に相談したところ、とりあえずドライヤーを貸してくれることになった。

「へっ……くしゅんっ!」

さっきからくしゃみが止まらない。

「ってかなにがあったのか説明してよ」

ドライヤーの風量を全開にしながら、美保は私の髪を乾かしてくれている。

「うーん、なんか変な男に絡まれてさ……」

私だって説明してほしい。見ず知らずの人にいきなり声をかけられて、挙げ句の果てにはグズ呼ばわりされて。雨が降っていたのに相手は最初から傘をさしていなかったし、本当におかしな人だった。

「じゃあ、情報集めるから特徴教えて」

「うちの学校の制服着てた。んで、緑の校章つけてた」

「え、それって同級生じゃん」

「でも私、見たことない人だったよ?」

「どんな感じの人?」

「黒髪で目つきが悪くて、身長も体格も大きかった。あ、あとピアスもつけてた!」

あんなに目立つ風貌だったら、さすがに校舎で見かけたことはあるだろうし。それが記憶にないってことは、やっぱり同級生じゃない?

だったらなんでうちの制服を着てたの?

うわ、考えただけで怖すぎる。

ひとりで勝手に妄想しながら震えていると、「それってさ……」と、美保の手が止まる。ドライヤーを持っていたことを忘れてしまったのか、熱風が耳に当たり続けていた。

「み、美保、あつっ……!」

「わ、ごめんごめん」

危うく火傷するところだった。ドライヤーのスイッチが切られたところで、美保がぼそりと言った。

「それって蒼井(あおい)翔也(しょうや)じゃないの?」