それからどのくらいの時間が過ぎたのだろうか。
いつの間にか日は落ちていて、辺りは暗くなっていた。公園の外灯には虫が音を立てて群がり始めていて、地面に映っている自分の影も色濃く見えている。
スマホは役立たずだし、公園の時計も止まっているので、今が何時だかわからない。
……でもべつにいいか、時間なんて。
「きみ、ここでなにしてるの?」
千鳥足で近寄ってきたのは中年のサラリーマンだった。一目で酔っていることがわかるほどお酒くさい。
「寂しいならおじさんが遊んであげようか? それともお金が欲しい? きみになら三万を出してもいいよ」
「………」
「どうしてシカトするの? もしかして焦らしてる? おじさんね、楽しいところならいっぱい知ってるよ。だからこんな場所にいないで早く行こうよ」
おじさんが私の手を掴んだ。
気持ち悪い、あっちに行け。そう思っているのに、それすらもどうでもいいように感じて私は抵抗しなかった。すると……。
「痛たたたたっ!」
突然おじさんが声を上げた。
「うぜーから消えろ」
なぜか私の瞳には、蒼井の姿が映っている。彼はおじさんの手を私から引き剥がして、そのまま強い力で握り返していた。
「だ、誰だ、きみは!」
「早くしないとマジで折るからな」
「ひぃぃ……」
おじさんは血相を変えて逃げていった。



