青の先で、きみを待つ。




「傘忘れないようにね」

お母さんはどんなに忙しくても、必ず玄関まで見送ってくれる。

「忘れる訳ないじゃん」

私は雨が跳ねてもいいようにと、私はローファーではなくスニーカーを選んだ。

「じゃあ、行ってきまーす!」

頭痛はやっぱりすぐに消えてしまったので、私は元気よく家を出た。

外は予想以上の大雨で道路にはたくさんの水たまりができていた。

こんな日はお気に入りの可愛い傘でもさして気分を上げたいところだけど、私の手には安いビニール傘が握られている。学校だと傘の置場所がみんな一緒だし、もし盗まれたら立ち直れないから。

「おい」

激しい水音に混ざってなにか聞こえた気がしたけれど、気のせいだと思いそのまま歩く。

本当になんで雨ばっかりなのかな。それだけで憂鬱な気持ちになるっていうのに。

「おいっ!」

突然背後から腕を掴まれた。

「……ひぃっ」

ビックリした反動で持っていた傘が飛んでいく。それはバシャリと泥水の上に落ちた。

な、なに? なんなの?

おそるおそる顔を上げると、そこにいたのは同じ高校の制服を着た男子だった。胸に付いてる校章が緑だから多分同級生だと思うけれど、私は知らない。

「な、なんですか…?」

怖くて傘を拾うことができなかった。

彼は私のことを鋭い目つきで睨んでいる。たしかうちの家の周りをうろついてる若い男がいたってお父さんが言ってた。

もしかしてこの人だったりして……?

同級生を不審者に結びつけるのはまだ早いかもしれないけれど、ヤバい人かもしれないと思えば思うほど、恐怖心が増してくる。

でも、叫べば近所の人が気づいてくれるだろうし、最悪車道を走る車に助けを求めれば……。