「ちっぽけな正義感しか持ってないなら、最初からやるんじゃねーよ」

「そ、そこまで言う?」

「鏡で顔でも見てくれば? でかでかと後悔って書いてあるぜ」

言い返したいけど、なんにも言えない。だって中途半端だってことを自分が一番わかってる。

わかってるからこそ、別の言葉がほしかった……なんて、蒼井にそんなことを期待した私が悪い。

「どうせ私のことが邪魔だから、さっさと教室に行けって思ってるんでしょ?」

「おお、よくわかったな。俺さ、ウジウジ考えてるやつって超嫌い。普通にぶっ飛ばしたくなる」

そのふてぶてしい態度に、私はわかりやすく眉を寄せた。

「あのさ、そうやって嫌いとかはっきり言うのやめなよ」

「なんで?」

「普通は思ってても言わないもんなの。昨日だって濱田先生に言ってたし、なにか理由があったとしても、もう少しオブラートに包むとかさ……」

「はは、オブラート」

ダメだ。彼と話していると血圧が上がってくる。

「蒼井は……人の気持ちとかわかんないの? これを言ったら傷つけるかもしれないって相手のことも気にしたほうがいいよ」

「お前が気にしすぎなだけだろ。だから言いたいことも言えねーんだろ」

その言葉に、ぎゅっと唇を噛んだ。

私は、言えない。いつも周りのことを気にしてるし、それが当たり前の考え方だと思っている。  

「……誰だって嫌われたくないじゃん。蒼井は人から嫌われることが怖くないの?」

「怖くない。勝手に嫌いになってくやつらなんて、どうでもいいだろ」

「どうでもよくないよ。ひとりになったら学校なんて地獄だよ。私は蒼井みたいに強くない」

結局、私の答えはそこに行き着く。

だからこそ、今だって教室に向かうことができずに、隠れるようにしてここにいる。

「勝手にいなくなってくやつらなんて追いかけるなよ、バカ。そんなのお前から捨ててやれ」

いつまでも煮え切らないでいる私のことが鬱陶しかったのか、蒼井はそう言ってどこかに行ってしまった。