――『前から思ってたんだけど、あかりってうざいよね』

ああ、また同じだ。

あなたは、誰なの?

『あいつ昨日靴下のまま帰ってたよ。超ダサくない?』

『靴? 学校のプールに捨てたけど』

誰、誰?

『こんなのゲームじゃん? 告られただけでも喜べよ』

沙織? いや、声が違う。

『ってか同じ空気吸ってんのも無理なんだけど。早く消えてくれないかな?』

微笑む口元。ぎしぎしと壊れていく自分の心。

負けたくない、でも頑張れない。

逃げ出したい、でもどこに?

誰か助けて、味方はひとりもいない。

許さない。

私は絶対に許さないから――。


「紺……野さん?」

橋本さんの呼び掛けで、私の脳内の砂嵐は静かに消えた。

「ご、ごめん。はい、ハンカチ」

「洗って返すね。本当にありがとう」

前回より、言葉も映像も鮮明だった。

私の知らない私がいる。

それは、ここではない別のどこかで生きていた自分なんだと、はっきりと確信していた。