けれど私の感動とは真逆に、紳士的に振る舞っていた加藤くんの表情がみるみる変わっていった。
「は? つーかなんで俺がお前にフラれなきゃいけねーんだよ。はいはい、もうやめ。みんな出て来いよ」
加藤くんが合図を送ると、身を潜めていたみんなが橋本さんの前に出てきた。
「どうせ嘘告って気づいてたんだろ? 本当に興醒めだわ。こういう場合は空気を読んでお願いしますって言えよ」
よっぽどフラれたことが許せないのか、加藤くんの文句は止まらない。
橋本さんは私たちの存在にも、加藤くんの嘘にも気づいてなかった。それでも、揺れることなく断った。
当たり前の結果だ。加藤くんなんて、ちっとも魅力的じゃないし、こんな最低な人に靡かなかった橋本さんを尊敬する。
なのに、そんな彼女のことを次々とみんなが責め立てていた。
「なんで秀の告白断ってんの? お前みたいな身分が何様だよ?」
「モテる女気取りじゃないの? 今日からまりえさまって呼んでやろうか」
ゲラゲラと品のない笑い声が響く。私にはその顔たちすべて悪魔に見えていた。



