「蒼井も喧嘩とかするんでしょ? 去年、先輩と揉めて自宅謹慎になったって聞いたけど」
すると、彼は読んでいた漫画を閉じて、私にゆっくりと近づいてきた。
「な、なに……いたたたたっ!」
なぜか蒼井に頬っぺたをつねられた。しかもけっこう本気で痛いやつだ。
「ちょっとなにすんの!?」
「俺の情報はいいから、お前は自分のことを思い出せよ、バカ」
「だからってつねる? 普通加減くらいするでしょ」
「加減したけど?」
「言っとくけど私だって進展してないわけじゃないからね! 今朝も変なことあったし」
「なに?」
あまり思い出したくないけど一応あの砂嵐の出来事を話した。あの瞬間はきっと一瞬だったんだろうけど、体感的には長い時間ずっとあそこに立っていたような気分だった。
あれが一体なんだったのか。
私にもわからないけれど、ひとつだけ確かなのは、泣いていたのも、苦しそうにしてたのも、私だった。



