青の先で、きみを待つ。




「蒼井は男でいいよね」

「なんで?」

「男子って人間関係もさっぱりしてるじゃん」

「女は違うのかよ」

「全然、違うよ」

複雑で繊細でつねに用心深くいなければならない。本当に面倒くさいと思う。

「人間関係なんて、自分の心掛けで変わるだろ」

蒼井にしては、まともな答えだ。

「蒼井はなにか心掛けてるの?」

「俺はそういうのが鬱陶しいから、誰ともつるまない」

「友達いないの?」

「いねえ」

「寂しくならない?」

「ならない」

私は無理だな。面倒くさい人間関係を断ち切ってしまえば楽になることが増えるかもしれない。

でもそれ以上に私は取り返しがつかないほどのものを失うことになる。

そこに待っているのは、蒼井みたいな自由じゃない。

ただの、孤独だ。

「先生、遅いね」

五限目もこのままサボろうと思っているので、欠席の紙を書いてもらわないといけないのに。

「なんか病院に行った。誰かの骨が折れたらしい。喧嘩だって」

「え、そうなの?」

腕折れたとか……こわ。

やっぱり男子も嫌だな。きっと私が私である限り、男になったところで生き抜くことに苦労する。

もっと器用な自分になれたらよかった。