青の先で、きみを待つ。






「先生ー。具合悪いんですけど」

私は昼休みに保健室へと向かった。

美保とご飯を食べていたところ、沙織も合流することになり、生々しい下ネタを聞いてしまったために気分が悪くなってしまったのだ。

本当、ああいう話は苦手。私が得意じゃないことを知っているのに、美保も楽しく盛り上がっていた。

「仮病お疲れー」

先生がいない代わりに、蒼井がいた。窓際のベッドに寝転んでいて、ここは彼の部屋かなと突っ込みたくなるほど(くつろ)いでいる。

「仮病じゃないし。ってかいつもいるよね。そっちこそ仮病でしょ」

「俺はお前みたいにいちいち理由とかつけねーし。普通にここが快適だから使ってるだけだけど?」

「それはそれで問題だよ。その手に持ってる漫画だって、どうせあんたのものじゃないんでしょ」

「うん。漫研のやつからパクった。読む?」

「読まない!」

私は苛立ちを当て付けながら、椅子に腰かけた。彼は「元気じゃん」と言って、再び漫画へと視線を戻す。

保健室には私たちしかいなくて、静かだった。

口を開けば嫌なことしか言わない蒼井も、こうして喋らなければ大人しい。きっと彼は沈黙でも大丈夫な人。それで私も沈黙に抵抗はない。

けれど、美保や沙織は違う。呼吸をするのと同じように声を発して、少しでも黙り込む時間があると『つまんないの?』って、不快な顔をする。

同じように笑い、同じように楽しまなければ変に思われる。一瞬でもそう思われてしまったら、容赦なく仲良しの輪から弾かれてしまう。