なにがどうなっているんだろう。翌日、天気はお母さんが言っていたとおりの雨だった。
お母さんにいくら買い物のことを聞いても行ってないと言う。さらには私の傘も知らないの一点張り。あんなに目立つ傘を忘れるはずがないというのに。
――お前が作った妄想じゃね？
蒼井の声が脳裏で繰り返されていた。
隙間なくぴたりと重なっていたはずの毎日が少しずつズレていく。
仕方なく差しているビニール傘には大粒の雨が絶え間なく落ちていた。自分には当たっていないはずなのに、まるで濡れているように寒かった。そんな曇天の空を嫌な気持ちで見ていると、突然、目の前が砂嵐のように揺れた。
『前から思ってたんだけど、あかりってうざいよね』
高笑いと一緒に聞こえてくる声。
突き刺すような視線と鉛のように重たい体。願っているのは、ただ消えたいということだけ。
泣きながら黒板に書かれた文字を消したあと、私は校舎を飛び出した。雨によって濡れていく私の手からはチョークの粉が混ざった白い雫が落ち続けている。
なんで、なんで、なんで。
あんなことを、しなければよかった。
そしたら私は――。
砂嵐が去ると同時に、私は我に返った。誰かの記憶が、誰かの声が、私の頭の中に流れ込んでくるような感覚だった。
なに、今の……？
心臓がバクバクして鳴り止まない。
気づけば、傘を持つ手がひどく震えていた。
