青の先で、きみを待つ。




「橋本まりえ」

「え……え?」

思わず二回も聞き返してしまった。まさかここで橋本さんの名前を聞くなんて予想もしてなかったから。

「俺たちがいた世界で橋本まりえは、女子グループのリーダーだった。学校でも目立ってたし、俺に媚びを売ってきたこともある。でも今の橋本は見た目も性格も真逆になんだよ」

待って、ここは笑うところ?

あの橋本さんが女子グループのリーダー?

性格や見た目が真逆になってる?

ねえ、なにを言ってるの?

おかしいというより、嘘でしょって吹き出しそうになったけれど、蒼井の次の一言で私の唇は止まった。

「多分ここは、お前のためだけの世界だよ」

きっとこれはあの時の続きの言葉だろう。

笑いたいはずなのに、彼の顔が真剣だから笑えない。

「私のための……世界?」

「俺が知る限りお前に関わる人しか真逆になってない」

「た、たとえば?」

「言っていいの?」

また出た。なんでわざわざ確認するようなことを言うのかな。勢いじゃなきゃ聞けないことだってあるというのに。

「……や、やっぱりいい。もう少し気持ちの整理がついたら聞く」

「だったら自分で思い出せ。お前がそのままだと俺も困るんだよ」