青の先で、きみを待つ。





――バンッ!!

私は慌てて扉を開ける。その先には屋上が広がっていた。

雨水で汚れているコンクリートは、濃紺色になっている。座るところもなければ、あまり綺麗とは言えないこの場所に生徒が立ち入ることは滅多にない。

「ハア……っ、な、なにしてるの?」

きっと私はマラソンよりも速く走った。視線の先には蒼井がいる。しかも立っている場所は手すりの向こう側だ。

「お前って見た目どおりに足おせえのな」

彼がこんなところにいるのを発見してしまったもんだから、こっちは急いで駆けてきたっていうのに、その表情は憎らしいほど涼しかった。

屋上から外周してる様子は見渡せるので、もしかしたら観察されていたのかもしれない。

「私の足の遅さなんてどうだっていいから、そんなところにいるのはやめなよ」

近くで見れば見るほど、彼が立っている場所にはわずかな隙間しかない。風でも吹いたら簡単に落ちてしまいそうだった。

「だって考えごとしてたし」

「か、考えごとって……そんなところでしなくてもいいでしょ」

彼にこういう(へき)があるのかは知らないけれど、私とは裏腹に蒼井は手すりに背中を預けて優雅に肘まで置いている。

「焦るだろ? こんなところに人が立ってると」

吹き抜ける風が彼の髪を揺らしている。もしバランスでも崩したら怪我だけでは済まないというのに、顔だけをこちらに向けた口元はニヤついていた。